● 特定技能制度の基本と具体策
1. 特定技能制度とは
2019年4月1日に新制度発足です。「出入国管理および難民認定法および法務省設置法の一部を改正する法律」が施行されました。「特定技能」の新しい在留資格が設定されました。
従来の技能実習制度では転職が禁止されていたため、止むない失踪が社会問題となっていました。一定期間日本で技能を習得後、本国でそれを生かすという本来の目的が十分機能していなかったため、それを改善するために新設されたのが特定技能制度です。
人手不足と言われていますが、就労環境が悪ければ外国人でも働きたくありません。働く環境を事前審査するのがフィリピン政府のスタンスです。労働条件なども厳しく審査されますので、雇用主は十分理解した上で採用して、採用後は生活支援も含めて人材の定着に務めなければなりません。
2. 外国人支援の重要性
はじめて日本で働く外国人には来日前から日本の概要を説明し、来日後は実際の生活支援から苦情への対応など、多種多様の支援があります。具体的には、事前ガイダンス、両政府手続き、ビザ取得、入国時の出迎え、住居確保、公的機関への登録、日本語学習の機会、自然災害や危機への対応など、入管法*に沿って実施されます。
3. 採用の準備、体制整備
3.1 技能実習生と特定技能職の比較
技能実習生は日本で技能を習得後、本国でそれを生かして就労することが主要目的のため、帰国しなければなりませんでした。一方特定技能職では一定期間日本で就労後、技能と日本語能力を習得、あるいは特定の分野での資格習得後は継続滞在が可能となります。詳細は次のような表になります。
- 年齢は18歳以上、特定技能の資格を保持していること、日本語能力保持者
- 本国での人材機関に保証金矢違約金、手数料が徴収されていないこと
- 正規の雇用契約がなされていること
- 出国時にOEC(Overseas Employment Certificate)の提示が求められること
- 健康状態が良好であること
3.2 費用の目安
外国人を雇用する場合、中長期的な計画が必要です。国の制度の違い、渡航費用の負担、生活支援などを総合的に考慮しながら、人材育成に本気で取り組むことで受け入れ企業の強みとなります。具体的にはどのくらいかかるのか、概算をご紹介します。
日本での人材採用と比べてやはり費用が多めになってしまうデメリットもありますが、費用をかけて計画的に採用し生活支援を行き届かせることで就労安定のメリットの方が大きいです。
3.3 採用側の要件・基準
- 特定の産業分野の外国人雇用の基準に合致していること
- 労働、社会保険および租税に関する法令を遵守していること
- 日本人と同等の労働条件または同等以上の条件で就労させること
- 日本と各国政府の二国間協定による必要手続きを完了していること
3.4 支援の要件・基準
特定技能職で外国人が日本で働くという場合、文化圏が近いこと、途上国であることを考えるとやはりアジア諸国からポールは給与の面で日本を超えているのでそれ以外からです。当社はフィリピン人特定技能職を採用される企業様向けに具体的にご説明いたします。 まず新たな入管法の特定技能職制度の趣旨は大きく3つになります。
- 労働者が十分に理解できる言語による支援体制が整備されていること
- 定期的な面談、支援の中立性
- 就業規則等をわかりやすく説明すること
4. 採用活動の実施と入国前の手続き
4.1 手続きの流れ
労働者の雇用方法は特定技能職では直接雇用となります。自社で支援体制すべてまかなえるか、日本の職業紹介事業者(登録支援機関を含む)を通すかは採用前から費用の面からも検討する方が良いと思います。いずれにしても、フィリピンの場合は本国の取り次ぎ支援機関(PRA: Philippine Recruitment Agency)と契約を締結します。
4.2 手続きの実際
国内では出入国管理庁、国外では各国政府の要綱に従います。いずれにしても日本で働く場合には就労ビザが必要です。特定技能外国人を採用するには主に次のような4つのルートがありますが、いずれも資格試験と日本語認定証が必要となります。
4.3 支援の実際
特定技能外国人を雇用する企業は入管法の規定に基づいた「1号特定技能外国人支援計画」に基づいて支援を行います。事業所ですべて担当する場合と、全部・一部外国人採用の「登録支援機関」に委託する場合とがあります。当社も支援機関として登録しておりますので、ご相談に応じます。
当社経由での人材採用では、ウエブ面談、現地面接同行、事前ガイダンス、空港送迎、生活オリエンテーションは英語で通訳を行います。必要に応じて翻訳もいたします。入社前、入社直後は日本語理解が不十分の場合もございます。英語でコミュニケーションをとることで不安を取り除くことができます。
採用企業は、出入国在留管理庁長官に対し、上記支援計画をはじめ各種届け出を定期的に行います。届け出についても当社は主要都市の出入国管理局の届け出を経験しておりますので、ご支援もおまかせいただけます。
5. 入国後の実務
5.1 入国の出迎えから役所手続き、住居手配など
【フィリピン出国】
フィリピン政府発行のOEC(Overseas Employment Certificate)と日本政府発行の就労ビザスタンプ済みのパスポートで飛行機に乗ります。
【空港出迎え】
日本上陸(入国)、主な空港(成田、羽田、中部、関西、新千歳、広島、福岡)で入国したら「在留カード」が交付されます。その他の空港では後に郵送されます。
【出入国の送迎】
入国時には空港に出迎え、出国時にはその逆で、それぞれ事業所からの送迎が義務づけられています。
【役所への各種届け出】
採用事業所は納税の届け出を行います。その他行政との連携も必要に応じて行います。
【住居手配/生活オリエンテーション】
銀行、医療機関、交通機関、警察署、病院などの情報提供、ゴミ処理、生活ルールの指導などを行わなければなりません。
【防災、災害・緊急避難への対応】
災害の多い国です。採用側、雇用者双方で定期的に対処方法を確認して、フィリピン人も交えた避難訓練も行うことが望ましいです。
5.2 社会保険の手続き
雇用保険、健康保険、厚生年金、労働災害保険の各種届け出を行います。つまり日本人と同じ扱いをします。外国人として差別的な扱いは禁止されています。
5.3 在日本外国大使館・領事館について
フィリピンの場合、東京、大阪にはPOLO(Philippine Overseas Labor Office: フィリピン海外労働庁オフィス)があり、自国民を守るためのサポート体制が万全です。万一、採用条件が違う場合やハラスメントがあると、フィリピン人は直接POLOに連絡を取ります。そして大使館から使用者へ連絡し、対応を迫ります。何もしないとブラックリストに載せられます。
5.4 滞在中の支援
【日本語学習機会の提供】
就労、生活する地域の日本語教育機関の情報提供、手続きの補助も行わなければなりません。任意で支援担当者や職員による日本語指導・講習も行うことが望ましいです。また、外部での研修への経済的な支援もあればなお良いです。
5.5 その他
相談・苦情への対応、日本人との交流促進、定期的な面談なども義務づけられています。ケースバイケースで出入国在留管理庁、労働基準監督署などと連携します